イベント実施のご報告:人材・組織開発サロン #4:エンゲージメントと組織 / 個人のパーパス

2024年2月14日(水)に「人材・組織開発サロン #4: エンゲージメントと組織 / 個人のパーパス」を実施いたしましたので、ご報告いたします。

当協会では、人事部門における人材開発、組織開発担当者を対象に、昨今の最新知識を身につけると同時に、各社の取り組みや問題意識を共有するために、人材・組織開発サロンを企画しています。

第四回目は、「人材・組織開発サロン #4:エンゲージメントと組織 / 個人のパーパス」というテーマでMAP U株式会社 代表取締役 杉本 匡章講師をお招きし、開催いたしました。

当日は、前半は杉本講師に講義していただき、後半は、参加者の質問や意見を交えながら、対話形式で進めていきました。

【杉本講師の講義のサマリ】

  • 人的資源HRから人的資本HCへ
    企業にとっては消費するコストの人的資源Human Resourceから、投資して価値を増やす人的資本Human Capitalへ変化
  • 下落する日本の付加価値と日本の一人あたりの生産性
    • 2023年の日本のGDPがドルベースで世界3位から4位で転落する見通し
    • 2022年の日本の1人あたり名目GDPはG7で最下位、OECD加盟国38カ国中でも21位
    • 『インバウン丼!』日本は豊かな国なのか?
  • 日本のエンゲージメントは世界最低水準。世界と広がるエンゲージメントの格差
    • 米ギャラップ「グローバル職場環境調査」によると仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合が日本は145カ国中最下位(出典:日本経済新聞 2023年6月14日)
    • 世界平均は調査を始めて以降最高となり、世界最低水準で横ばいする日本との格差が広がる
    • 日本は「やる気のない」国になったのか?
  • How型の人材(どうやってやるのかを考える人)よりもWhat型の人材(何をやるのかを考える人)を増やしていくことが重要。
    • How型(シングルループ)
      • 業務を「いかに」効率的・効果的に遂行するか
      • 会社や上司が決定したことを、いかにきちんと遂行していくかが重要
      • ノウハウやスキルを教えることで継承が可能
    • What型(ダブルループ)
      • 業務のゴール・目的が本質的に「何で」あるか
      • 提案をしたり、上を説得することが重要
      • 先行事例やノウハウがないため、自発的に学習し、創意工夫し、協働することが必要
      • 高いエンゲージメントが必要となる
    • 変化が激しく複雑化している今、付加価値を出すためには過去事例を生かしたHow型よりWhat型の比重が大きくなっている
  • エンゲージメントを向上させるジョブ・クラフティング
    • ジョブ・クラフティングは、Wrzesniewsk & Dutton(2001)によって提唱された概念であり、仕事のやりがいや満足度を高めるために、自分の働き方に工夫を加える手法のことで、以下の3つの観点がある
      • 作業クラフティング(仕事のやり方に対する工夫)
      • 人間関係クラフティング(周囲の人への働きかけの工夫)
      • 認知クラフティング(仕事の捉え方や考え方に関する工夫)
    • 3つ目が特に重要。自分、仕事のパーパスがないと興味・関心と結び付けられない
  • パーパスにより自ら生み出すエンゲージメント。組織と個人のパーパスの響き合いがエンゲージメントを生む
    • そもそも個人のパーパスと組織のパーパスは違うものである
    • 個人のパーパスと組織のパーパスが重なる部分がエンゲージメントとなる
  • エンゲージメントの失敗例
    • 組織のパーパスに無理やり個人のパーパスを寄せてもエンゲージメントは生まれず、一時的に効果があっても続かない
    • そもそも個人のパーパスが明確になっていないと、昇進しようが転職しようが何となくエンゲージメントが低い状態が続く
  • エンゲージメントを生み出すパーパス探求
    • 「オーナーシップ開発」と「リーダーシップ開発」を通じた個人と組織のパーパス探求がエンゲージメントを生み出す
    • 個人のパーパスを明確にしてエンゲージメントを高めるため、各メンバーの「オーナーシップ開発」が重要
    • 組織(各事業部)のパーパスを明確にするため、経営陣(各事業責任者)の「リーダーシップ開発」が重要
  • パーパス探求の肝となる「内省」。人が自覚している「意識」の領域はごく僅かなため、時間をとって「内省」し、自覚的にパーパス探求をする必要がある
  • パーパス探求は2人以上での実施が効果的。自分が知っている自分を言語化・再認識した上で、他人が知っている自分の像を受け入れることで、自覚する領域が拡大する

【参加者より挙がった質問と回答(一部抜粋)】

  • なぜミッション・ビジョン・バリューはパーパスという言葉になったのか?

→ ミッション・ビジョン・バリューには、一度定めたら変わらないという静的なイメージがあり、定めたら後はほとんど見直されることがなく形骸化しやすい現実がある。一方で、パーパスには常に変わっていく動的なイメージがあり、折に触れて見直す特徴がある。言葉を変えることで静的なイメージから動的なイメージに変えたかったのではないか。また、ミッション・ビジョン・バリューには組織の観点しかないが、パーパスには組織の観点と個人の観点がある。組織が目指すところだけではなく、個人の目指すところにも焦点が当たっているのもパーパスのもう一つの特徴である。

  • (パーパス探求は)改めて考えてみたいと思っている人にはいいが、やる気のない人には拒否反応がすごい。嘘くさい、きれいごとなどの反応にはどう対応すればいいのか?問題意識のない人はどうしたらいいのか?

→嘘くさい、きれいごとなどの反応はあって当たり前で、組織と個人のパーパスが重なっていないといけないという思い込みや、無理に重なっていることにしようとする組織からの圧力を個人が感じていることがその反応の背景にある。実際には、組織と個人のパーパスが離れていることは当然あるし、パーパス探求をすることで、自分と会社が合わないことに気付くこともある。組織と個人のパーパスが全く重ならないのであれば退職すれば良く、組織がそれを許容できないのであれば、パーパス探求はやめた方が良いとお客様に伝えている。そうしないと嘘くさいきれいごとのインパクトを与えてしまう。ただ、実際には、個人のパーパスと組織のパーパスが重なっていることがほとんどである。転職を考えていた人が(パーパスが)重なるところが明確になったことで、転職ではなく配置転換希望をだしたということもある。

  • 組織のパーパスを明確にしたら、外れてくる人もでてくる。排除してしまうことになるのではないか。その辺りはどうしたらいいか

→どこまでが自分たちの仲間なのか。本当に全ての人を受け入れないといけないと思っているのか?そこに嘘があるなら、(社員は)みんな気付いてしまう。そもそも「こういうことをしたい人は集まれ」というパーパスを掲げることが、特定の人を排除することにはならないと思う。

参加者の方々の自社の状況や取り組み、課題などみなさん積極的に意見交換をしていらっしゃり、良い議論の場となり、その後の懇親会も大変盛り上がりました。

サロン実施後は、参加者からは「エンゲージメント、組織と個人のパーパスについては、非常に奥が深くて難しいテーマと感じた一方で、みなさんとディスカッションする中で理解度を少し深めることができた」、「「パーパス=志」とても腹落ちした」などのご意見を頂戴いたしました。

「パーパス探求」は、以下のような場合にお勧めですので、ぜひご検討ください。

  • 人生の意義や目標を明確にして、自分のやりたいことや成し遂げたいことを見出したい人
  • 社員の「エンゲージメント」を高め、社員のモチベーション向上や生産性アップを目指したい企業や組織

本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームよりご連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

一般社団法人日本イノベーション協会
事務局
高橋佑季

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