イベント実施のご報告 : R&Dサロン #2: 未来予測とシナリオプランニング

2023年11月1日(水)に「R&Dサロン #2: 未来予測とシナリオプランニング」を実施いたしましたので、ご報告いたします。

当協会では、R&D部門における人材開発担当者を対象に、昨今の最新知識を身につけると同時に、各社の取り組みや問題意識を共有するために、R&Dサロンを企画しております。
第二回目は、「未来予測とシナリオプランニング」というテーマで株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役 新井 宏征 講師をお招きし、開催いたしました。
当日は、前半は新井講師に「未来予測とシナリオプランニング」について講義していただき、後半は、参加者の方々と質疑応答をしながら議論を行いました。

【新井講師の講義のサマリ】

  • 未来を考える手法はさまざまなものがあるが、それらを総称してForesight(未来予測)と呼ぶ。企業だけでなく、政府などでも活用されている

  • Foresight手法の中でも、シナリオプランニングは事実に基づきながらも未来を「想像する」、「仮説を立てる」という点から、想像性 / 創造性も活用するとも言える。一人で考えるだけでなく、複数の参加者により検討されることが多い

  • シナリオプランニングの特徴は「不確実性」に目を向ける点。設定した期間の中で、起こり得る状態としていくつかの選択肢を考える。例えば、「自動運転の普及」でえあれば、これはインフラや法規制など様々な可能性があり、大きな方向性では進むだろうと考えられるものの普及するスピードやその方法はひとつには決められないので、「不確実」だと言える。逆に「高齢化」は設定した期間の状態をある程度予測して特定することができるので、これは、不確実ではなく「確実」であると言える

  • シナリオプランニングの進め方は下記の通り
    ①テーマを設定する(場所、期間、テーマ)
    ②関連する要素を挙げる
    ③挙げた要素が「確実」なのか、「不確実」なのか議論して、分類する
    ④「不確実」な要素で軸を組み合わせてみる
    ⑤それを見ながら、『シナリオ』を検討する
    ⑥それぞれのシナリオ(「不確実」だがそれぞれが起こり得る未来)から逆算して、今からの行動を考える
  • R&D部門で実施する際によく出てくる否定的な意見とそれに対する回答

    ・技術をやっている自分たちが社会の未来を考える意味がわからない
    →社会的期待を含めた研究開発テーマ検討は大変重要。「社会的期待」については最初に議論すべき。その時々に出てくる個別のニーズに応えるだけでなく、新たな価値を創造する「発展型シーズ志向」(ほら、こういう生活があるのですよ。すばらしいでしょう)が大切。想定した理想の状態を描き、そこに至るまでの技術進化、製品進化をロードマップとして計画する考え方もできるのではないか

    ・できれば良いけど、そんなことできる人材がいない
    →最初から完璧な素養を持ったメンバーはいない。プロジェクトを通したメンバー育成を考えるとよいのではないか。シナリオプランニングを通して、技術と社会の橋渡しをする考え方を身につける。また、それを身につける時間を含めた時間設定やプロジェクト設計を行う

    ・取り組んでも上に受け入れてもらえない
    →シナリオプランニングに取り組んだだけで成功するわけではない。これらの活動は定点観測をしつつ、組織内で「戦略的対話」を進めることが重要

【質疑応答から一部抜粋】

  • 挙げる要素の粒度は抽象度が高い方が良いのか?
    →検討テーマが個別のものには具体的で、全社戦略などは抽象度が高くて良い。目的や時間軸の設定によって、抽象度を変えていくと良い
  • 2軸の取り方はどう選べばいいのか?
    →まずは色々な要因を多く考え、たくさん軸を作り、2本を選んでいく。また、シナリオプランニングをやる前に目的を議論しておき、それに沿って選択すると良い
  • 中期経営計画とシナリオプランニングはどちらが先?どのような関係だと理解すればよいか?
    →自分(新井講師)のお客様は、シナリオは10年後で、中期経営計画は3年くらい。一旦今の積み上げの3年間を作りつつ、未来を逆算しながら、うまく組み合わせている。一方、中期経営計画はもう機能しないのではという議論がある。中期経営計画は変化したら計画もごそっと変えられるくらいでないといけない
  • 一人でもんもんと考えるときに、シナリオプランニングは使えるのか?
    → 一人でもできないわけではないが、「こういうことも起きるかもしれない」という思考の広がりにストッパーがかかってしまうことがあるかもしれない。可能であれば様々な人、場合によっては何をやっているのか知らないくらい直接関係ない人に意見を聞いてみるとよいかもしれない

実施後、参加者様からは「シナリオプランニングの基本を学び、活用の具体例を知ることができた」、「シナリオプラニング手法の概要を学ぶだけでなく,実際に適用する時に発生した課題、発言、押さえるべき重要なポイント等お聞ききすることができ,貴重な時間だった」などのご意見を頂きました。その後の懇親会も大変盛り上がりました。

以下は、当日の内容をマインドマップにしてまとめたものです。(クリックすると拡大して見られます)

今回はやや複雑で難しいテーマでしたが、新井講師が分かりやすい例を入れて説明してくださったのと、参加者のみなさんの議論を通じて明確になっていったと思います。また、新井講師が「社会的期待と科学技術の結び付け」の重要性を説明してくださったのも印象的でした。シナリオプランニングは、「確実」、「不確実」のところはどうしても判断が入るので、「気持ち悪さ」を感じる場合もあると思いますが、未来を考えるときに「絶対」はないので、「気持ち悪さ」も含めて考えていくことが重要だと感じました。

本記事に関するご質問やコメント、疑問に感じた点がございましたら、ぜひ、お問い合わせフォームよりご連絡ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

一般社団法人日本イノベーション協会
事務局
高橋佑季

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