2023年9月27日(水)に「R&Dサロン #1: R&D部門における事業創出と人材育成」を実施いたしましたので、ご報告いたします。
昨今、技術者は自身の専門分野に詳しいことを前提として、より広い視野でビジネスを理解すること、さらに、AI、データサイエンス等の最新動向も常に把握する必要がある等、求められる知識・スキルは広範囲になってきています。
上記を背景に研究開発部門では、技術者に必要なスキルの定義、その育成方法を常に見直さなくてはいけない状況です。
今回は、R&D部門における人材開発担当者を対象に、昨今の最新知識を身につけると同時に、各社の取り組みや問題意識を共有するために、R&Dサロンを企画しました。
記念すべき第一回目は、「R&D部門における事業創出と人材育成」というテーマで一般社団法人イノベーションアーキテクト 代表理事の中村 善貞講師をお招きし、開催いたしました。
当日は、中村講師に「R&D部門における事業創出と人材育成」と題して、ご自身の富士フイルムでのご経験を中心に講義をいただきました。後半は、参加者の方々と質疑応答をしながら議論を行いました。
【中村講師の講義のサマリ】
- (中村講師が在籍していた)富士フイルムは、写真フィルムという本業喪失の中、保有技術を生かし新規事業を創出することにより第二の創業を成し遂げた。そこにあった考え方と、実現を促した要因を参考に、R&D部門における事業創出と人材育成について考えてみる
- 新規(事業)を生み出すのに必要なもの
①「変人」。普通の人が言わないようなことをするのがキーマン。誰も注目していないことに「これ面白いのではないか」と注目し、個人的な興味や想いで、新しい領域をもたらす
②「辺境」。辺境に現れる新しい試み
③「偏愛」。偏愛に宿るブレークスルー
- 新しいことを生み出すのは「余白」が大事
新規を生む「異質」、そこに必要な「辺境・変人・偏愛」。それを許す「余白」(時間や余裕)が重要。富士フイルムでは写真フィルムの全盛期から本業以外の研究テーマを研究している人がいた
- 決定者共感のキーポイント
意思決定者に提案するときのポイントと順番。まずは「切望顧客」(本当にほしいと思っているお客様はいるのか)、次に「事業期待」(広がる事業期待)、最後に「解決可能性」(課題を解決する十分な可能性)。最終的に「この人(提案者)だったらできるかな」と意思決定者に思ってもらえるかが重要
- 新規事業を探索できる人の条件
心理的にタフでないととてもできない。評価されない覚悟も必要。「自分がやりたいことをやる!」ことが大切。こういう人でないなら、新規事業はやめた方がいいかもしれない。新規事業創出に絶対必要なのは「個人のwill」(担当者、チームが「想い」や「覚悟」をもつ)である
- 新規事業をやる上で経営者に必要なこと
経営者には「リスクを取る覚悟」が必要。分からないこともあるが、「この人のこの提案に掛けてみるか」と主観的に判断できることが大事
【質疑応答から一部抜粋】
- 「変人」はなかなか会社から認められないのではないか
→その通り。承認者はロジカルな人が多いから、中々うまくいかない。経営者の中にも新規事業の経験がある人、発想が面白い人がいるので、その人を狙って承認をもらうと良い
- 余白の確保について
→(富士フイルムは)全体的に、余裕があった。研究所長も(研究)テーマ以外のことをやっていた。「面白いことをもっとやっておけ」と上の人も言っていた。そういうのが大事だという雰囲気があった
- 「変人」への「評価」は?
→業績評価を上げボーナスを増やそうなどとは思っていない。そういうことに興味がない人がほとんどである。自分がやりたいことにマンパワーとお金をかけていいという状態が最もうれしいこと。好きなことをやらせてあげることが最大の報酬
実施後、参加者からは「これまでの経験と重ね合わせて共感を感じ、自社の状況に対する課題をあらためて認識することができた」、「新規市場×新規技術の領域の新規事業を起こすために、異質な価値観を持つ人材が必要な理由とそのための仕組みが理解できて、大変参考になった」などのご意見を頂きました。その後の懇親会は多くの方々にご参加いただき、ネットワーク作りの場にもなったようです。
以下は、当日の内容をマインドマップにしてまとめたものです。(クリックすると拡大して見られます)
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一般社団法人日本イノベーション協会
事務局
高橋佑季