2023年9月22日(金)に「人材・組織開発サロン #1: 管理職育成と組織マネジメント」を実施いたしましたので、ご報告いたします。
昨今、コロナ禍による社会生活の大きな変化、AI・データサイエンス等の技術の発達、世界情勢の変化を背景に、ビジネスや組織は大きな変化を迫られています。同時に、コロナ禍を通じて様々な働き方が定着、個人の仕事や働き方、会社等、『働く』ことに対する価値観も大きく変化しています。
上記を背景に、人事部門では、これまでの一律の施策(会社が決めて、それに従業員が合わせる)が必ずしも機能しない場合があり、あらためて、組織や個人のあり方を見直すことが必要です。
ビジネスや組織のあるべき姿、そこで従業員に必要なスキルの定義、その育成方法は常に進歩しており、試行錯誤しながら進めていかなくてはいけないため、多くの会社の担当者は苦労されています。
今回は、人事部門における人材開発、組織開発担当者を対象に、昨今の最新知識を身につけると同時に、各社の取り組みや問題意識を共有するために、人材・組織開発サロンを企画しました。
記念すべき第一回目は、「管理職育成と組織マネジメント」というテーマで株式会社HRファーブラ代表の山本紳也講師をお招きし、開催いたしました。
当日は、山本講師に「管理職育成と組織マネジメント」について講義をいただくと同時に、参加者の方々とディスカッションをする形式で実施いたしました。
【山本講師の講義のサマリ】
- 日本の競争力の低下
スイスのIMDが発表している世界競争力ランキングなどでは、日本の順位が低下していっている。
調査の詳細の中で、上級管理職に関するランキングやマネジメント教育に関して、64カ国中最下位に近い。
しかし、ダメだと言っていても仕方ないので、この点が良くなれば日本が良くなると捉えるべき。
- 山本講師から見た、この5年のマネジメントに関する問題意識
(1)コミュニケーションの進化、高度化、意味化
(2)タイムマネジメント ~本気の生産性向上~
(3)グローバル人材開発
- コミュニケーションに関する課題
ビジネス環境が激しく変化しているにも関わらず、また、理解度と信頼度が低下しているにも関わらず、現場のマネージャーが、そのことに気づいていないのではないか。
コロナ禍以前は、毎日一緒に雑談して、くだらない話もして、ということが行われていて、現在は、圧倒的にコミュニケーション量が減っているのに、「相手(部下)のことを理解できている」というわけがない。そこを自覚できていないことが問題になっている。また、パワーハラスメントが取り上げられることが増えた影響から、マネージャーから部下に気軽に声をかけられない環境もできてしまっていると感じる。
1on1の前に、「毎日声をかける」ことを行う必要があるのではないか。一日に5分でも10分でもいいから、部下のために時間をつくる必要がある。業務の指示以外のことをいかに話すかが大事である。
とは言え、現場のマネージャーは、時間がなさすぎるので、さらなる上司(マネージャーの上司)が現場のマネージャーの時間を捻出することをサポートする必要もあるのではないか。
- タイムマネジメントに関する課題
本気の生産性向上を行う必要がある。例えば、以下のようなことを本気で実践していかないといけない。- 早い意思決定を行う、意思決定者を絞る(色々な人にお伺いを立てない)⇒ 権限委譲を図り、任せると同時に責任を問う体制に
- 社内資料を一生懸命つくらない → 常に、その仕事は何のためにやるのかを考える
- グローバル人材開発
そもそも、グローバルで活躍する企業をつくろうとしているのか、という問題がある。経営トップは問題意識があっても、マネージャークラスには「グローバルで活躍しなくても」と思っている人が一定数いるのではないか。
また、メンバーシップ型とジョブ型の影響もそれなりにある。グローバルでマネジメントする人に求められる素養は、ジョブ型によって醸成される組織風土やマネジメントスタイルで育った人が発揮できる素養(例えば、コミットメント、競争・上昇志向、自己/個人責任、自立自律、能動的、活発な議論、自己主張)であり、メンバーシップ型の環境で育った人がグローバルでマネジメントする場面で活躍しにくい。
- VUCA時代に場を創るリーダーシップ
現在はVUCAの時代=正解のない時代である。ニューノーマル(新しい常識)ではなく、「ノーノーマル(常識のない)時代」の到来である。リーダーは正解がない中で、意思決定をする必要がある。人を引っ張るだけではなく、人が能動的に動き成長できる場を作るのが、これからのリーダーの役割。
【参加者より挙がった意見】
- 管理職の人材開発の重要性は前から言われていた。しかし、上級管理職の育成はあまり聞いたことがない
- (管理職研修の)器があって、準備があっても、マインドセットが受け身だと思う。自分から手を挙げない
- コミュニケーションについて、コロナで在宅勤務になり、受け手側の感受性が過敏になっていると感じる。メンタルが弱くなったと思う
- 現在、「ウェルビーイング」という言葉が出てきたが、これもタテにとってコミュニケーションがとりにくくなっているのではないか
実施後、参加者からは「(山本講師のお話は)いずれも共感する内容で、現状の組織の在り方や施策について批判的に考える必要性を感じた」などのご意見を頂戴いたしました。その後の懇親会でも議論の続きが行われ、大変盛り上がりました。
以下は、当日の内容をマインドマップにしてまとめたものです。(クリックすると拡大して見られます)
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一般社団法人日本イノベーション協会
事務局
高橋佑季